森 咲樹の御茶BLOG「森Tea 百茶百想」アーカイブ

日本茶専門店『おちゃらか』ステファン・ダントン社長と対談!日本に居たら気づけないこと、日本人だから気づけないこと。

こんにちは。Bonjour.
森咲樹です!
 
先日行った、ダントン社長、小堀宗翔さん、森咲樹、三人の対談について、今回はダントン社長に視点を置いてお話していきましょう。
 
ダントン社長は、とてもフレンドリーで、紳士で、積極的かつ情熱的な方でした。愛国心が強く、ソムリエの資格を持つダントン社長は、ワインに関する知識と情熱に満ち溢れています。自国の文化に誇りを持つ姿が、とにかく格好良かったです。
 
驚いたことは、ワインへの愛情と同じくらい、「日本茶」にも愛情を注いでいます。尚且つ、知識も長けています。ワイン、日本茶、双方に関して、  ダントン社長が繰り広げる話には、物凄い説得力がありました。
 
ダントン社長のお話は止まらず、マシンガンのように様々な意見が出てきました。私たちが口を挟む隙間もないほど。ですが、こんなにも話しているダントン社長が、何を一番大切にしてきたかというと、「人の話を聞く」ということだと思いました。
 
お茶を飲む消費者の意見、そして、お茶を作る生産者の意見。勿論、ダントン社長自身の意見も消費者の意見になる。実体験を「おちゃらか」のお茶に活かしていることも沢山あるんだなぁと感じました。
 
例えば、ダントン社長は、仕事柄出張が多くて、ビジネスホテルによく宿泊するそうです。ビジネスホテルには、だいたいTea bagの緑茶が置いてあるじゃないですか。Tea bagだったり、粉末タイプだったり。でも、そのお茶たちには、色が出るだけで、部屋中に香りが広がるわけでも、口の中に味が広がるわけでもなかったと。
 
色々なビジネスホテルに宿泊してみてせっかく置いてある日本茶に、悲しい気持ちになったダントン社長。
 
では、これが日本旅行へ来た外国人なら、どう思うか。これが日本茶への窓口だった場合、きっと愕然とするだろう、とダントン社長はおっしゃっていました。でも、誰も反論できないしこれが「日本茶」だと思ってしまう。そして、最近は客単価を上げるために、テレビの横にだいたいドリップコーヒーを置いてあることに気付いたそうです。であればそのドリップコーヒーが、おちゃらかのtea dripだったらどうだろう。
 
季節によって、香りも味も種類も違う、我が社のtea dripをホテルに置いて、宿泊者に選んでもらう。そこ一つでも、旅の楽しみが増えるのではないか。美味しいものを飲めるのであれば、お茶の香りがふわっと部屋中に広がる楽しみを感じられるのであればそこにお金が発生したとしても、なにも惜しくはないのでは?

そうおっしゃった後に、「おちゃらかのドリップを今日持って来たので飲んでみてください。」と、前回紹介した「ほうじ茶キャラメル」のドリップを外し、カップを目の前に置いて下さいました。
 
カップを口に近づけた瞬間、キャラメルの甘い香りが鼻に通り抜けて胸が踊りました。
 
口に含むと、ほうじ茶の香ばしさとキャラメルの甘さの中にある香ばしさが、ベストマッチで、飲んでいるととてもワクワクしてしまいます。キャラメルの香りが、一番感じるべき日本茶であるほうじ茶の香りも損ねてはいないし、むしろほうじ茶がよく引き立っているのが不思議でした。
 
このお茶を、ビジネスホテルで海外の方に感じて頂けたら、それこそ「おもてなし。」
 
私も、ライブツアーがあるとビジネスホテルに宿泊することが多いです。私はあえてホテルのお茶に手をつけませんね。近くのコンビニでお茶を買ってからホテルに入るんです。
 
それは、お湯を沸かしてお茶を淹れなくても、ペットボトルのキャップをひねれば簡単に飲めるからという理由もあります。
 
そして私自身、ホテルでお茶を淹れて飲むという習慣がないからかもしれません。なぜそういう習慣がないのか。ホテルに美味しいお茶が置いてある、という期待がないからだと思いました。
 
でももし、それはそれは美味しいこの「ほうじ茶キャラメル」のようなお茶たちがホテルに置いてあったら、一手間かけてもきっと飲みますね。そしてそれが一つの楽しみにもなり、期待へと変わると思います。
 
ダントン社長のお話を聞いて、色々と想像しました。季節によって変わるtea drip、今回はどんなものが置いてあるんだろう。何を飲みながらゆったりと一人の時間を過ごそうかな。ホテルに宿泊すると、いつも過ごしている自分の部屋ではないから、どこかソワソワしてしまう方もいると思います。
 
でもダントン社長のこの発想で、そのようなホテルに対する概念がもっと良いものに変わると思うし、より良い癒しを提供できるのではないかと私も確信しました。
 
日本中のビジネスホテルに、「おちゃらか」のtea dripが置かれる日が、いつか来ますように(^^)

又、フランス人らしくロマンチックだなぁと思ったことがありました。
 
「お茶にお化粧が必要。」
 
これだけ聞くと、ハテナ?ですよね(笑)。
 
これが、ダントン社長が消費者側に対する、販売促進の方法だそうです。ソムリエの資格を持つダントン社長は、お茶にもワインと同じ考えを用います。ワインは色を見て香りを感じて、良ければ自然と口に持っていきますよね。
 
例えば、レモンのお茶には、レモングラスとレモンピールをお茶に装飾する。又、お茶に全く関係ない花弁を装飾することもある。それが、ダントン社長流のお化粧。葉を見て、花弁を見て「可愛いな」と思えば自然と香りも嗅いでしまう。そこで、「わぁ!こんなにいい香りがするのね!」と感じれば、次に思うことは、「飲んでみたい!」つまり買いたくなる。そうやってお茶を買ってくれる消費者を増やすそうです。どういう国籍でも人種でも、同じ心理になるでしょうね。
 
タレントも同じですが、オーディションには、お化粧をして、きちんとした格好で行きます。そして、マネージャーもそう指導します。それは、自社のタレントを売り込みたいから。タレント自身は自分を売り込みたいから。きちんとした格好で相手と向き合います。
 
「みなさんも、表参道はお化粧なしで歩くのは、少し気が引けるでしょう?それと同じことですよ。」と、ダントン社長はおっしゃっていました。なるほどなぁ。ダントン社長は自分が作ったお茶を人に紹介したいから、お化粧をする。より美しく魅せる。
 
見た目がファーストインプレッションを左右するわけですから、とっても大切なんですよね。お茶にお化粧をするというのは、ソムリエならではの考え方だと、感心の嵐でした。
 
そして、生産者側の意見。
 
ダントン社長は、生産者の意見こそ自らの足で聞きに行っています。ダントン社長が一番注目しているのは「浅蒸し茶」。グラスに水出ししたときに白ワインのような色になります。なので、欧州人には馴染みがある色なんですよね。これを出されたら、中身は何かわからないけど、自然と手に取るそして香りを嗅ぐ。ワインではないことに気がついて、これは何かと店員に聞く。
 
「実は、これはお茶なんですよ!」ここで外国人に対してお茶を紹介する窓口が開けるとのことです。そこから日本茶に対しての教育をしていくんですって。だから浅蒸し茶は、外国人に一番伝えやすいお茶だと言っていました。
 
でもその浅蒸し茶は現在、生産者が70歳近い方ばかりだそうで、後継者がいないそうです。必然的にこの素晴らしいお茶が今後消えてしまうと、ダントン社長も寂しそうにおっしゃっていました。
 
でも私はその話を聞いて、外国人に一番伝えやすいのって、抹茶じゃないのかと疑問を持ちました。抹茶こそ、日本茶としてプッシュするものじゃないの?

ダントン社長の話は続きます。
 
そんな中、抹茶が世界中で流行っていると今や新聞やメディアは騒いでいる。でもそれは違う。彼はそう言い切りました。
 
本来の抹茶とは、水に溶けにくいものなんです。水に溶けやすいものは、インスタントのグリーンティーパウダーや抹茶パウダー。私も保育園生の頃、茶道を習っていたので、思い出しましたが、抹茶も粉末状だけど、抹茶パウダーより、もっと濃いものなんですよ。全く違うものです。水専用の抹茶もありますが、風味が少し変わってしまうそう。本来の抹茶は、お湯としか混じり合いません。
 
そういった事実がある上で、ダントン社長はおっしゃいます。
 
欧州人の職人の意見として、欧州人の調理方法として、今彼らが欲している抹茶のカタチは、「水や冷たい牛乳に溶ける抹茶。」それが出来てこそ抹茶は流行ると思うし、職人たちがより使いやすくなる。日本人は皆、抹茶が世界中で流行ってきている!と言うけど、それは、現地の本当の声が聞こえていない。本当は何を欲しているのか、聞いてあげてほしい。そう私たちに訴えかけてきました。
 
それはそれは、物凄い目力で、ダントン社長の本気を感じました。水や冷たい牛乳に溶ける抹茶かぁ。そういうものができたら、確かに抹茶はもっと有名になるでしょうね。外国人にもっと身近に感じてもらえて、それが外国でも日常化されるかもしれません。
 
ですが、私としては、そこに違和感を感じました。意味のある全ての作法があった上での、あの熱いものが「抹茶」です!水や冷たい牛乳に溶ける抹茶…?それは本来のお抹茶ではないのに、外国人にそう捉えられてしまうのは、どこか寂しい。自分たちのスタイルにして、日本の抹茶のスタイルは受け入れないのか?そういう風に感じたりもしました。それは作法も含めて、「抹茶」に誇りを持つ、日本人の私の考えです。

でも…ちょっと待って。
そこで、ふと頭に浮かびました。
 
この三人の共通点は、「自分が好きなものを、伝えたいものを、より沢山の方に、身近に感じてほしいという気持ち」です。
 
水や冷たい牛乳に溶ける抹茶を開発することは、世界中に伝えたい抹茶を身近に感じてもらえる窓口なのでは。外国人には抹茶はレベルが高いかもしれません。ましてや、私たち日本人だって、そう感じる人も多いはずです。
 
水や冷たい牛乳に溶ける抹茶を知ってから、作法も含め日本の本物の抹茶を知り、興味を持ってもらえればいい。そちらの方が近道かもしれない。全ての作法を、面倒臭いと思うかもしれない。でも、それも含めてジャパニーズカルチャーの抹茶なんだから。私は、そこでさえ世界中の方々に愛してほしい。
 
ダントン社長の意見で疑問を持ちつつも、考えた果てにこう気づくことができました。
 
沢山書いてきましたが、読んで頂いた通り日本茶には色々な窓口があります。どんな窓口でもいい。より沢山の窓口を設けて、自信を持って「いらっしゃいませ!」と言えるように、私たちはもっと日本茶の知識を身につけておく必要があります。日本茶の現状を知る必要があります。
 
日本に居たら気づけないこと。
日本人だから気づけないこと。

 
ダントン社長のおかげで、沢山気づけました。
ありがとうございます!!
 
次回は、このような話を踏まえた上で、小堀宗翔さんに視点を置いて、話していきますね(^^)